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人間シフト
春夏秋冬 平成4年
 プロ野球のセントラルリーグで、八百号を超えるホームランを打ち、数年前引退した読売ジャイアンツの王選手が現役で全盛の頃、「王シフト」ということばがよく使われたことは、今でも記憶されている方も多いと思う。
 「王シフト」とは、王選手が打席に立つと、王選手の打撃力を警戒し、それに対応するために、相手チームの守備陣がとった独特の守備のかまえのことである。
 王選手は、この警戒網をかいくぐり、乗り越えて、あれだけの打率を上げ、ホームランを打ったのだから、偉大というほかない。
 ところで、ここで私が言いたいことは、べつに野球のことではない。「王シフト」の「シフト」ということばを借りて、神のこと、あるいは神と人間の関係について、考えたり気づいたりしたことを書いてみたいのである。

 かつて何億年も前のこと、恐竜といった巨大な生物が繁殖し、全盛を誇っていた時期があったというが、ある時期に絶滅した。そして現在この地球上で、いちばんふえているのは人間である。
 先日も報道されたが、この数十年の間の世界の人口増加は、まことにいちじるしいものだという。このままの割合でふえていくと、たしか西暦二千五〇年には、世界人口は百億を突破するだろうと予測されていた。
 今でもすでに世界の人口は、六十億を越えている。その人間が、南北世界でなお大きなへだたりはあるが、豊かな生活を目指し、あるいはさらに豊かな生活をしようとして、毎日絶え間なく、活発な生産活動や消費を行っている。そのために使われる石油などのエネルギー資源や、そこから生じる炭酸ガスや廃棄物などは、じつにおびただしい量に達していることは、今では誰もが承知していることである。

 この事実が、大気や水や森林といった自然に、大きな影響を及ぼしていない筈がない。現に自然環境の汚染とか破壊とかいったニュースが出ない日はないくらいである。
 しかし、それでは自然のほうは何もしていないのか、ただ汚染され破壊されているだけであろうか。私は、けっしてそんな筈はないと考える。
 自然のなかには、しだいに増大する人間の勢いに対応し、人間の暴走や暴発をくい止め、人間だけではなく、地上の様々な生命の全体を立ち行かせ、さらにはいのちあるものとしての地球全体を守ろうとする営みが、着々と、また様々な形をとって、動き出しているのではないだろうか。
 私が「人間シフト」という見慣れないことばで表現したいのは、そのようなはたらきのことである。このはたらきは、まさに神のはたらきというべきものであって、自然のなかにも、また人間自身のなかにも、はたらき続けているのではないだろうか。
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