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扉絵集



2018年10月号(No.802)
日々のおかげ
阪健太郎

 学生の頃、自炊で失敗して、酷く不味いピラフを作ってしまったことがあります。未だに油臭くベトっとしたあの食感を思い出すと気持ち悪くなります。「悪いことを思い出して苦にするな。今日が大切である。先を楽しめ」と説く口の中に、あの不味さが残って忘れられないのです。
 そのくせ、毎日食べている家内の料理は、すぐに忘れてしまうのです。それが昨日の食事のことだったり、昼のおかずが何だったか夜に思い出せなかったりすると、さすがに気まずいものがあります。
 でも、それがしあわせなことなのです。忘れてしまえるのは、それがふつうであたりまえに美味しかったということだからです。日々変わらぬ家庭の味にその日の嫌なことも忘れ、安心して食べることができたからです。そんな料理があたりまえのように食卓に上るまでには、献立を決め、下ごしらえをしてと、並大抵でない仕事があり、それを毎日こなしてくれる人がいるということだからです。
 過去を苦にして、今日をふいにして、先を心配して暮らするのは、あの不味いピラフを食べ続けるようなものでしょう。それではせっかく神様が出してくれた、出来立ての日々のおかげも冷ましてしまうのに。
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