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岡田典明(在籍補教)
命のバトンは信心から -69-

 ソ連軍による武装解除を拒否し、四万人に及ぶ民間人の命を救った将軍、根本博陸軍中将について紹介しましたが、話はそれだけではありません。この方は戦前から知られた「シナ通…中国の事情に通じた人物のこと」で、日本軍と戦った国民党の指導者である蒋介石とも親交があり、お互い信頼にたる人物として認め合う間柄であったようです。従って根本中将は、自分の指揮下にある軍隊の武装解除の相手は、蒋介石をおいてないと決断されたわけです。昨日までの敵に対し蒋介石は「怨みに報ゆるに徳を以てす」という命令を発し、日本人対する報復を禁じ、一部の戦犯を除く軍民合わせて百万もの日本人を早期に帰国させたのでした。
 一方、「日本人の生命財産は絶対に保障する」とのソ連軍の約束は、武装解除に応じた途端反故にされ、言葉に出来ないくらいの悲劇のどん底に突き落とされた、満州の状況は、遠藤誉さんの著書に詳しく書かれています。武装なき在留邦人の惨劇は、戦争の惨禍の何たるかを示して余りあるものです。
 戦後の逃避行の中で幼い遠藤さんが目撃したのは餓死者の遺体の山に向かって祈りを捧げるお父さまの姿だったそうです。熱心な金光教の信者であったお父さまにとって、そうせずにはおれない、いわば信心のまことの行為であったのでしょう。自らも体力の極限状況にありながら、一心にみ霊の安らぎを祈るお姿を想像いたしますと、自らの信心の至らなさを痛感いたします。
 なお余談ですが、先に紹介しました、根本将軍の戦後ですが、実に驚くべき事実があります。それはどういう事かと申しますと、戦後無事帰還していた元将軍は、昭和二十四年六月、こつ然と人々の前から姿を消し、やがて彼は軍隊時代の副官と旧知の通訳とともに台湾に現れたのです。中国本土から台湾に政権を追われた、蒋介石と国民軍を救うため密航したのです。百万の日本人を帰国させた義に報いるために「この命義に捧ぐ」との一念で、作戦指導に当たり、人々から戦神と言われるほどの大勝利を国民軍にもたらし、台湾の平和が実現しました。
 戦争も平和も、人間がどう生きるかにかかっています。
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